一歩後退二歩前進

ブラジルで開催された FIFA 2014 World Cup は、ドイツの優勝で幕を閉じた。
今回のW杯は世界のサッカー界にとっても、日本のサッカー界にとっても前回の南アフリカW杯から大きな変化があった大会となった。
 
まず、世界のサッカー界では、前回の大会で”チキタカ サッカー”と称され、ボールを保持して細かくパスをつないで得点に結びつけ、優勝したスペインがグループリーグで早くも姿を消した。
この最大の原因は、この4年間で”チキタカサッカー”に対する研究が進み、各国が対応策を採ってきたことと、スペインチームのメンバーの世代交代がうまく進まず、年齢が高くなったメンバーで戦わなくてはならなかったことであろう。
 
このスペインに対して、トップ4に残ったドイツ、アルゼンティン、オランダおよびブラジルのうちドイツ以外の3国は、似た戦法を採っていた。 すなわち、守備を固めて、機を見て前線にロングボールをおくり、前線で待ち構えている卓越した技術をもつFWの個人技で得点をあげるというものであった。 この戦法を可能にしたのは、アルゼンティンのメッシ、オランダのロッペンそれにブラジルのネイマールといった現在の世界サッカー界のスーパースターがいたからである。
 
これに対し、ドイツはこの3人ほどのスパースターを持ってはいなかったが、GKをはじめとした固い守備力とどこからでも得点できる攻撃力の厚みに加え、相手の出方に応じ戦法を変えることができる柔軟性を有していたことが、優勝できた要因である。
 
翻ってみて、日本チームは、前回南アフリカ大会からさらに上を目指すべく、ボールを保持して敵陣で攻撃を続ける戦法をとった。 しかしこの戦法はスペインの戦法に近く、上述したように世界で研究し尽くされていた。 このため戦法を変えればよかったのだが、日本にはメッシやネイマールほどの一人で得点をとることのできる能力の高い選手はいなかった。 さらに「自分たちのサッカーをやれば勝てる」と言って、自分たちがそれまで作り上げてきた戦法にあまりに強くこだわってしまった。 もちろん、今回の日本チームのボールを保持して、敵陣で攻撃を続ける戦法が必ずしも間違いであるとは言えないが、少なくともグループリーグの相手はすべて上位ランキングであり、「自分たちのサッカー」をやれば勝てるほど甘くはなかったのである。
 
先日、日本チームの新しい監督としてメキシコ人のアギーレさんが就任した。 9月に入ってさっそく2試合が行われ、そのためのメンバーは約半数がこれまでのメンバーと入れ替わった。 戦法がどういったものになるのかまだ明確ではないが、これまでとは違ったものになりそうである。 この4年間作り上げてきたものにさらに新しいものを付け加えて、一段上のレベルに向かっていってほしいものである。
8月5日に”広場”を更新した。